太陽光発電は土地活用方法の一つとして近年で急激に増えてきました。
この太陽光発電を普及させるきっかけとなったのが、「固定買取制度」と呼ばれるものです。
買電価格よりも売電価格を高くし、太陽光発電を導入している人に利益を与える方法です。
売電価格は導入時の価格が維持されるために、売電価格が高ければ高いほど利益が出るということで、当初は非常に人気でした。
しかし売電価格は年々右肩下がりになってきています。
そこで今回は、今後の太陽光発電の動向を見ていきましょう。
もくじ
太陽光発電のメリットとデメリット

メリット
太陽光発電のメリットと言えば、何といっても固定価格買取制度の存在でしょう。
太陽光発電による収益を可能にしているのが固定価格買取制度の存在であり、電力会社による固定買取で一定期間の買取を保証しています。
そして太陽光発電は自然エネルギーのため比較的安定した収益を得ることが出来ます。
もちろん、日照時間の関係で月々差が出るのは仕方ありませんが、年間を通じた天候不順がなければ、そこまで大きな差にはなりません。
さらに近年では田舎の安い土地を購入してそこで太陽光パネルを設置するところも多く、そういった土地には障害物が少なく日照を活かしやすいことから、人気があります。
デメリット
太陽光発電のデメリットとして挙げられるのは周辺環境の変化などです。
今日照の良いところに太陽光パネルを設置したとしてもその付近に高い建物が建ってしまうと、影が出来てしまい発電量は著しく低下します。
田舎の土地に建てるのであれば、そう深刻に考える問題ではないのですが、将来的な日照の良さは誰にも保証できないのです。
また2014年には一部の電力会社で太陽光発電からの接続申請に対し回答を保留する事態が起きました。
接続申請が通らなければ、売電することができなくなり収益を得ることが出来ません。
この問題は太陽光発電の急激な普及スピードに電力会社が対応できなくなったから起きた問題です。
その結果、接続可能量を上回った時には無補償の出力制御が入る可能性を申込者に承諾することを前提とした接続にすることにしました。
これにより、もし接続可能量を上回ってしまったら、一時的ですが売電が出来なくなり、投資費用の回収が遅れてしまう事態に陥ることになります。
売電価格の推移

2009年に売電制度が施行されるまでは、各電力会社が自主的に余剰電力を買い取っており、各社それぞれの契約料金単価で支払っていました。
そのため、各電力会社で価格は異なりますが、住宅用なら20円前後/kwh、事業用10円前後/kwh程度で売電されていました。
しかしこれでは高価な設備費用の回収が中々出来ず、太陽光発電を導入しても損をする人が多くいました。
固定価格買取制度の導入
太陽光発電の買取制度は2009年に「余剰電力買取制度」という住宅用と事業用の余剰電力買取がスタートしました。
当時は、住宅用は48円/kwh、事業用は24/kwhに設定されており、施行前の価格の約2倍かそれ以上の買取価格となりました。
しかしこの制度は、発電事業を目的とする産業用は買取対象外とされており、この時でも導入する人は少なかったようです。
しかし2012年からは産業用の全量買い取りも含めた制度に移行することで、一般の人でも太陽光発電を導入する人が増えてきました。
昨今の買取価格
近年の買取価格は下記のようになっております。
区分 | 売電価格 | 売電期間 | ||||
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | |||
10kW未満 | 出力制御対象外 | 31円/kWh | 28円/kWh | 26円/kWh | 24円/kWh | 10年間 |
出力制御対象 | 33円/kWh | 30円/kWh | 28円/kWh | 26円/kWh | ||
10kW未満 (ダブル発電) |
出力制御対象外 | 25円/kWh | 25円/kWh | 25円/kWh | 24円/kWh | |
出力制御対象 | 27円/kWh | 27円/kWh | 27円/kWh | 26円/kWh | ||
10kW以上 2,000kW未満※ |
24円/kWh +消費税 |
21円/kWh +消費税 |
未定 | 20年間 |
このように数年先の買取価格まで決まっております。
この表を見ればわかると思いますが、買取価格は年々下がってきています。
この原因としては、2009年の買取価格はあくまで太陽光発電を導入する人を増やすためのサービス価格のようなものであり、現在のように導入する人が増えてきたから徐々に下げていくという当初の狙いのおかげです。
そのため、現在導入しても当初ほどの利益を出すことは難しくなってきています。
さらに導入費用の低下も原因とされています。
費用と将来の問題

ランニングコストについて
太陽光発電のランニングコストは住宅用で4000円前後/KW、非住宅用の場合は6000円前後/KWとされています。
主な内訳は電気代や点検費用などに充てられ、例えば電気代となると月に数百円から数千円程度です。
安いと感じますが、一番費用が掛かるのが点検費用や故障した際の交換や修理費です。
点検については法的義務がないのですが、大体のメーカーで4年に1度以上の定期点検を推奨しています。
点検費用の相場は買取価格の算定基礎になっており、1回あたり2万円前後です。
非住宅用ともなると使われる電気量も増え、電気主任技術者を選任しなければなりません。
2000KWまでの電力の場合は点検を外部に委託することが可能で年間100万円以上かかる場合もあります。
太陽光パネルは、外に置くために自然によって汚れることは予想できることです。
山などに設置した太陽光パネルの場合は、特に汚れやすい特徴があります。
屋根への設置の場合は、小さい規模での清掃になるため必然的に人件費比率が高くなり、1KWあたり1万円前後になっています。
交換や修理については多くのところで保証期間内であれば無償対応になります。
しかし保証期間を超えた場合は費用が発生し、パワーコンディショナーなら基板交換で数万円程度、全交換ならば20万円程度はかかります。
しかし確実に故障するわけではないので、そこまで気にしなくてもいいかもしれません。
導入費用の問題
日本の太陽光発電システムは、欧州に比べて2倍近く高いと言われており、やろうと思えばまだ価格を下げることができます。
しかしこれにも買取価格に目標があるように、導入費用にも一定の目標が設定されているのです。
2019年で30万円/KW
それ以降で20万円/KWと住宅用の目標ではこのようになっています。
しかし実現が可能かというと、未だ不透明な状態であり、もしかしたら価格の低下に歯止めがかかる可能性もあります。
売電価格と導入費用の関係
太陽光発電を導入するためには高い買取価格が必要不可欠です。
それがなければ太陽光発電を導入する意味がなくなり、導入した際にかかった費用の回収も難しくなってきます。
さらに導入に対し、補助金が出る制度もありましたが、現在では廃止されています。
太陽光発電の高い買取価格については、当初よりも導入費用が下落したことにより、現在ではあまり考慮されなくなってきています。
これは太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーが促進された経緯として、クリーンな自立電源の普及が目的でした。
それが現在ではある程度普及されてきたため、売電よりも自家消費にインセンティブを与えることを最優先にしているのです。
買取価格の検討を行う調達価格等算定委員会というものがあり、買取制度が始まった2009年から2019年までの間に発生する、導入費用の低下や機器の性能向上を踏まえつつも、買取価格を下げていっております。
現在ではほぼ想定内で進んでおり、このまま下がり続けることが予想されます。
しかし2000kw以上の産業用太陽光発電に関しては2017年度から新たに入札制度が設けられました。
産業用太陽光発電の入札制度について
以前は太陽光発電の導入や運用コストをベースとした買取価格が算定されていました。
しかしこれは電気料金に賦課金が上乗せされる形で、電気の利用者負担となっていたので、かなりの費用が掛かっていたのです。
この利用者負担を軽減するために作られたのが入札制度というものです。
入札制度では1kwhあたり上限買取価格と入札募集要領が定められて、発電事業者は供給可能な1kwhあたりの買取希望価格と出力量を提示して入札に参加する形式のものです。
これで安価な買取希望価格を提示した事業者から、入札募集要領に達するまで落札されていきます。
この入札制度の特徴は落札された発電事業者にしか、認定の権利が与えられないことになります。
そのため入札制度の導入により、発電事業者は従来よりも発電コストを重視しなければいけなくなり、発電コストが高い発電事業者は排除される形になっていきます。
買取期間終了後について
買取には固定買取期間というものが存在し、10年または20年と決められています。
その間は必ず買い取ってくれるのですが、それを過ぎてしまえばどうなるのでしょうか。
電力会社としては義務的に買取をする必要がなくなるので、ほぼ確実に買取価格が下落することが考えられます。
発電施設を持つ電力会社にとって、契約料金単価相当では、自社の発電原価よりも高いコストで買い取る必要もなく、買い取る気もないでしょう。
さらに卸電力市場が年々価格を下落しており、ここ5年程度で7割程度まで価格が下落しているのも要因の一つとして挙げられます。
しかし過度に安価な買取価格にしてしまうと、卸電力市場への転売をする人が増えてしまうので電力会社にとっては面白くありません。
それでも買取価格が下がることは食い止めることが出来ないので、今まで以上に収益を得ることは難しくなってくるでしょう。
まとめ

住宅用太陽光発電は年々その規模を縮小していき、既にブームは去ったと言ってもいい状態にまでなってきています。
今後、下がり続ける買取価格を考えると、費用の回収もさらに難しくなっていくと予想されます。
そのため、今後太陽光発電を導入したいと考えている人がいるのであれば、買取よりも自分で使う方向に考え方をシフトしていく必要があると思います。
買取では回収し、プラス収支にするのはかなりの時間がかかります。
その長い時間をかけて回収するよりだったら、自分で消費したほうが幾分か特になるでしょう。

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