コンパクトシティの成功事例とデメリットを不動産コンサルタントが解説

コンパクトシティの成功事例とデメリット2017

皆さんはドーナツ化現象をご存知でしょうか。
人口が都市部へ集中することで起こる地価の高騰により、都市部よりも郊外のほうに人口が分散され、都市部よりも郊外へ人口が流出することを指す言葉です。
この現象はバブル期から問題となっており、大型商業施設などが郊外に出店することでその流れに拍車をかけています。

ドーナツ化現象が進んでいくと、やがては都市部の人口減少により地価の下落や経済的な潤いが無くなってしまいます。

それを解消するために、コンパクトシティという構想が最近注目を集めています。
コンパクトシティとはどのようなものなのかを今回解説していきます。

コンパクトシティとは

コンパクトシティとは読んで字のごとく、小さくまとまった都市のことです。
商業地や行政サービスなどの生活上必要な要素を一定範囲に集めることにより、効率的な生活を目指すことを目的に形成されています。

郊外では必需品である自動車などの移動手段から外れ、公共交通機関や徒歩を利用することで郊外のライフスタイルとの差を生み出しています。

そのような都市を形成することにより、郊外に広がった生活圏を都市部に集約させることで、無駄のない生活を目指しています。
コンパクトシティは昔から概念として存在していましたが、最近特に注目を浴びています。

理由としては人口の減少が主ですが、他にも理由があります。

①人口減少

コンパクトシティが注目されるようになった一番の理由が人口の減少です。
戦後の日本は高度経済成長と爆発的な人口増加の影響により、人口の分散が起こり郊外へ移り住む人が増加しました。

人口の増加がピークを越えて減少の一途を辿っている現在日本でも、ドーナツ化現象が進んできており、それを危険視して郊外への拡大を止め、中心部に都市構造を再構築するべきという動きがあります。

②少子高齢化

人口減少に拍車をかけている要因の一番が少子高齢化でしょう。
足腰が弱くなってくる高齢者では自動車社会の郊外の暮らしは難しくなってきます。

近年では高齢者の運転が問題視されつつあり、免許の返却も増えてきました。
その結果、移動手段は公共機関と徒歩が主になるため、利便性の高い地域に移り住むことを考えるのです。

また、郊外よりも都市部のほうが優れた環境で医療を受けられるという理由もあるようです。

③経済的な理由

人が集まるようになると、その地域の産業が発展し経済が活性化します。
その結果、労働力の確保が容易になり消費も増えます。

これが郊外に人口が集中していってしまうと、行政の管理範囲も広がり、道路や水道などのライフラインのコストなどが増大していきます。
さらに中心部の人口が減ることで、税収が減り、現在栄えている都市部が衰退する事態を引き起こします。

このような要因が重なって、現在コンパクトシティが注目されているのです。

コンパクトシティの特徴

コンパクトシティについて説明していきましたが、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
メリットとデメリットの観点で比較していきましょう。

コンパクトシティのメリット

まずはメリットから見ていきましょう。主にメリットは3つです。

①利便性の向上

前述したようにコンパクトシティでは公共機関や徒歩での移動が主になります。

そのため、他の地域よりもアクセスが容易になり、郊外で必要だった自動車の利用頻度が減ったり保有しなくても普通に生活できるようになるのです。
そうなると、毎月かかっていた交通費や自動車税などの支払いが無くなるため、家計にも優しいのです。

②行政サービスの向上

地域行政が効率化されることにより、自治体の運営も向上します。
その結果、市や区の税金を使用し様々なサービスを住民に向けて行ってくれます。

③時間の有効活用

ドーナツ化現象などにより、隣の県から長時間かけて都市部に働きに出る人が増えています。
その結果、電車で往復数時間かけている人も出てきており、時間のロスは相当です。

コンパクトシティでは、人が一か所に集まるため通勤時間が短くなり、その分の自由な時間を好きに過ごすことが出来るライフスタイルが形成されるのです。

コンパクトシティのデメリット

次にコンパクトシティのデメリットを見ていきましょう。デメリットは主に3つです。

①居住地域の制限

コンパクトシティでは居住地域と環境を保全するための地域を明確に分けています。
そのため居住可能な地域が制限されることになり、コンパクトシティに対して賛同していない人にとっては苦しい物になるでしょう。

人それぞれのライフスタイルがあり、コンパクトシティに対して不満感を持っている人も少なくありません。
また、移住した人が多ければ多いほど、移住をしない人への差別や文句などが増える可能性もあります。

②トラブルの増加

コンパクトシティは、その概念から必然的に人口密度が上がります。
人口密度が多くなってくると様々なトラブルが起きる可能性があります。

例えば、隣地との距離が近づくことによる騒音トラブルや日照問題。
また、治安の悪化などが想定されます。

③資産価値の変動

一か所に人が多ければ多いほど不動産の価格が高騰します。
しかしそれは逆に人がいない居住地域の指定から外れた地域の不動産の資産価値は下落していくのです。

そのため居住地域と非居住地域の不動産価格の差は大きくなっていきます。

コンパクトシティの成功例と失敗例

コンパクトシティに取り組んでいる都市はいくつかあります。
その中には成功したケースもあれば、失敗してしまったケースもあります。

それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。

①コンパクトシティの成功例  富山市

富山市は2010年をピークに人口が減少していっており、さらに自動車保有率が高く、8割の人が通勤にマイカーを使用し、自動車保有率全国2位の地域です。
住民の移動は基本的にマイカーを前提になっており、宅地は敷地の広い戸建が中心です。

そのため、公共機関が衰退していき、ドーナツ化現象が進んでいました。
その結果、行政サービスのコストが増大し、高齢化による医療サービスの低下などの問題が出てきました。

その現状を打破するために、2006年ごろからコンパクトシティの計画を進めました。

富山市では車の依存度を下げるために、JR富山駅を中心とする市街地と徒歩で利用できる生活圏を「団子」と呼び、「串」と呼ばれる公共交通機関でつなぐ計画を打ち出しました。
その際に行われたのが、利用者が少なく廃線寸前だったJR富山港線を次世代路面電車(LRT)へ再生させるというものでした。

いつの時間でも使えるように、運転間隔を短縮するなど改善し、高齢者の料金も抑えるなど、様々な取り組みを行った結果、JR時代よりも利用者が2倍以上に増えました。

さらに中心街の活性化のために商業施設の「グランドプラザ」を建設し、年間100回以上のイベントを開催するなど、街を盛り上げていきました。

その結果、富山市では自動車の利用が減っていき、CO2排出量が減ったことで環境モデル都市として指定されるようになりました。
このように富山市はコンパクトシティを形成することでプラスに転じた成功例として注目を集めています。

②コンパクトシティの失敗例  青森市

富山市のように成功したケースもあれば、失敗したケースもあります。
その代表例が青森市です。

青森市も富山市と同じく、中心街の空洞化が問題になってきており、平成11年に「コンパクトシティの形成」を目標に、市街地をインナー、周辺の住宅地域をミッド、郊外をアウターと3つのエリアに分けました。
アウターエリアでは基本的に開発工事は禁止にして、インナーエリアにマンションや市営住宅の建設などの居住環境の向上を狙いました。

そうやって郊外のアウターエリアからインナーエリアへの移住を促したのですが、開発のできないアウターエリアは不動産価格が下落。土地を売ってもインナーエリアの住居が買えないといった問題が出てきます。
そのため、インナーエリアに移動したくても出来ない人が大勢出てきました。

中心街の活性化として、185億円をかけて複合商業施設をオープンしました。
開業当初は年間600万人を集め、最初はコンパクトシティの成功例として多くのメディアに取り上げられていました。

しかし、実のところ入居予定の百貨店が入居前に撤退。その代りに公共施設などが入ったため、予定されていた賃料が回収できず、開業から赤字が続いている状況なのです。
2015年には経営不振から市長が退任、2017年には経営再建のために商業施設を閉店する事態までに陥っており、コンパクトシティが成功したとは言えない事態となっています。

2008年にはミッドエリアにイオンが進出するなど、郊外エリアの商業施設の出店も止めることができておらず、現状を見るとコンパクトシティは失敗。
行政はこの事態をどう改善させるか今後の動きに注目されています。

コンパクトシティまとめ

コンパクトシティは、実際やってみないと効果が分かりません。
実現が可能でも、その有効性とリスクを天秤にかけなければならず、失敗したリスクは大きいため、そう簡単に実現は出来ません。

また、郊外には農家の人も多くいます。
その農家の人たちを中心地に連れてくることは、相当に難しく、まず不可能と思っていいでしょう。

それでもコンパクトシティの形成を進めたとしても、すぐに効果が実感できるかは運しだいになります。
富山市のように10年足らずで成功するのか、さらに時間がかかるのか、それとも青森市のように時間をかけて失敗してしまうかもしれません。

しかも成功例である富山市でも完璧に成功したとは言えない現状があるのです。

確かに高齢者の自動車保有率は下がりましたが、若者の多くは未だ自動車を保有しており、移動手段として使っています。
さらに現在でも郊外への居住者は増え続けており、多くの課題が残り続けています。

このようにコンパクトシティの形成は必ずしもプラスになりえず、相当の年月とコストもかかるため、行政も積極的に組み込むことが出来ていない現状があるのです。

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