農地バンクとは~その制度と4つの問題点を不動産コンサルが解説

 

近年、アベノミクス効果で経済が潤ってきているということをよく耳にするかと思います。
アベノミクスといえば金融政策や財政政策の改革ばかり取り上げられていますが、実はアベノミクスの中には農業改革が含まれています。

しかし、現状この農業改革の進展はほぼなく、意味のない物だと言われています。
この農業改革の中心になるのが農地バンクと呼ばれる制度です。

今回はこの農地バンクについて解説していきます。

農地バンクとは何か

農地バンクとは不必要になった農地を賃貸や売却したい所有者を集め、借りたい、買いたい農業経営者に提供していく窓口機関のようなものです。

この組織は都道府県別に設置された農地中間管理機構が行っています。
「農地集積バンク」や「農地中間管理機構」と呼ばれることもある機関です。

なぜ農地バンクが生まれたのか

なぜ今回のアベノミクスで農地バンクが作られたのでしょうか。
日本の農業は基本的に小規模農家が支えており、第二次世界大戦後は農地改革によって小作の王から自作農への転換が行われて農地が細分化したという経緯があります。

それ以外のも先祖代々農家を継いできたところもあり、農業の基盤とされている農道などを共同で使用することで効率的に農業を行うことで農家は一つに纏まっていきました。
これが農村の始まりです。

しかし小規模農家が集まったとしても農地は全体の持分ではなく、全て個人所有です。
そのため売買などで所有権がどんどん移転していき、次第に農地は分散されるようになりました。

耕作放棄地の増加

農業は国の自給率を左右する大切な基盤産業です。
国のためには農業は必要不可欠であり、自国の食糧調達が困難になるのを防ぐための大事な礎なのです。

しかし個人所有が増え、売買事例も増えてくると、農地を宅地などの土地に変えてしまう、いわゆる農地転用が増えてきました。
そのため農地の絶対数が減っていったのです。

さらに日本は少子高齢化社会が進み、若い世代に人気のない農業という仕事は跡継ぎもおらず、離農や相続放棄などで農家が急激に減っていきます。
戦後直後では、国の自給率は70%を超えていましたが、2017年現在では30%台にまで落ち込んでいます。

このままでは日本の農業離れが進んでいくため、それを食い止めるために農業バンクが生まれました。

そして農業バンク創立へ

時の総理大臣である安倍晋三首相は、「攻めの農業」をかかげて、分散化された農地を集積し、農業経営を拡大したい人に利用させることで、農業の効率化と収入増を狙いました。
不必要になった農地所有者から、農地を貸してもらって一つの大きな農地にするのです。

個人間の貸し借りではなく、農地バンクという公共機関を挟むことで、契約時の不安感を解消させる狙いもあります。

実は、これまでも農地を集積する政策というのはありましたが、基本的に売買を中心とした仕組みになっており、さらに農地バンクという機関もいなかったため個人間同士の契約になっていたのです。

そのため、不安感や契約後のトラブルもあり、この度農地バンクという間に入る機関を設立しました。

農地バンクの詳しい仕組み

農地中間管理機構は、農地を持て余している農家から、賃料を支払って農地を借り上げることで、農地を集めています。
そして集められた複数の農地は、ある程度の規模までになったら一つにまとめられ、大規模に農業をしたい農家に貸し出します。

こうすることで、機構は農地を貸している人に賃料を支払い、農地を借りている人から賃料を受け取るという形になるのです。

しかし現実は甘くはなく、様々な問題が生じています。

大前提として借りる人がいない

農地バンクは、何も無制限に農地を集めるわけではありません。
機構が借り上げるのは、借りる人が希望する地域にある農地だけです。

貸したい人がいれば、機構に連絡し農地リストに載ります。
しかしその状態で賃料が発生するわけはなく、その付近の農地を探している農家が現れなければ、ずっと放置されることになります。
そのため年単位で現れない場合も考えられます。

そしてこれ以上待っても借りる人が現れないだろうと判断された農地は、所有者に返されます。
そのため、貸したい人にとっては運任せになるわけで、必ずしも放置されている農地を救う手段にはならないのです。

借り上げ期間について

機構が農地を借り受ける期間は原則10年以上とされています。
この10年の間に、仮に貸している側が返してくれと言っても応じてもらえず、必ずその借り上げ機関まで貸さなければなりません。

そのため、例えその農地を売買して利益を得ようとしてもそれが出来ず、貸している側にほとんど自由がない取引になっているのです。

それが農地バンクの利用が進まない理由の一つと考えられており、いつ賃料が支払われるか分からないような状態よりも、売ったほうがいいと考える人が多いのです。

賃料について

農地の賃料というのは、土壌や気候、地域によって変わるものです。
農地バンクも例に漏れず、地域によって賃料が変わります。

同様の地域の農地であれば、賃料の水準はほぼ同じですが、借り手側としては出来るだけ安く借りたいというのが本音です。
そのため同様の農地でも賃料に差が出ることがあります。

ここで賃料を固定化してしまうと、高すぎるや安すぎると言ったトラブルが起きやすくなり、契約が成立しにくくあります。
農地バンクとしては農地の集積化と効率化を目指している以上、どうしても借り手側の意見を優先するのです。

そのため、地域の水準より高い金額で機構が借り受けることはほぼありません。
逆に地域によっては非常に低い金額で貸すことになるでしょう。

そのため機構に貸し出して安定した収入を得ようとしても、得られる確率は限りなく低いため、わざわざ積極的に貸そうという人はほとんどいなくなってしまう危険性があるのです。

農地バンクのメリットとデメリットについて

ここでは農地バンクによるメリットとデメリットについて紹介していきます。

農地バンクには多くのメリットと、同じくらいデメリットもあるので、よく考えて検討する必要があります。

農地バンクのメリット

・不要な農地を活用できる
相続しても使う予定のない農地というのは毎年のように固定資産税が課せられます。
また、農地を管理していないと農業協同組合から連絡が入る可能性があります。

そんな不要な農地を近所の人にタダで貸して、耕作してもらっている人もいます。
中には、用水費などの費用を一部貸主が負担してまでも管理を任せている人もいるくらいで、農地の管理というのは費用と手間が非常にかかるものなのです。

しかし農地バンクに登録することにより、機構のほうで管理してくれるので管理する手間が省けます。
さらに、運が良ければ農地を貸すことによる収入が得られる可能性があるので、少ないながらも収支がプラスになるのです。

・機構が借主を探してくれる
農家に知り合いがいる人ならば、借主を探すことにそこまでの労力をかけずに探すことが出来るでしょう。
しかし相続などで、農家でもなく、さらに遠くの地域の農地を貸し出そうとしてもそう簡単にはいきません。

しかし農地バンクに登録しておけば、周辺の同じような農地と統合して、大きな区画で貸し出しが可能なので、個人で借主を探すよりもずっと楽に探すことができます。

・税金の上昇を防ぐことが出来る
近年、放置されている耕作放棄地の税金を上げることが検討されています。
これは耕作放棄地の増え続ける現状を防ぐために政府が検討しており、もしこれが適用されれば、増税は必至です。

しかし農地バンクに登録することにより、農地はキチンと管理されていると判断され、税金の上昇を気にせず放置することができます。

・賃料と協力金が得られる
もし借主が現れた場合、賃料を得ることが出来るというのは何度かお話をしました。
この賃料の他にも、協力金という名目で、貸した農地の広さに応じた金額が交付されるのです。

もちろん、そこまで高額な協力金が支払われることは稀ですが、それでも一時所得としてプラス収支になるのは間違いありません。

農地バンクのデメリット

前述したようなメリットがあれど、現状を見ると農地バンクは成功しているとは言えないものになっています。
始まってまだまもないということを差し引いても、その進みは遅く、一般の人に浸透していません。

その原因としてメリットよりもデメリットのほうが大きいと考えられているからに他ならないのです。

・誰が借りるのか分からないという不安
個人間の貸し借りであれば、借主の顔や人柄を確認してから貸すことができます。
しかし農地バンクの場合は、借主探しは公募で行われるため、貸主側は顔も人柄も分からない人に貸すことになるのです。

農地バンクに登録している一般の人ならば、それでいいと考えがちですが、貸主が農家であれば話は別です。
自分の育てた農地を顔も人柄も分からない人に貸すのは不安だと考える農家が多く、積極的に貸しだそうとはしないのです。

また一般の人でも知らない人が自分の所有している土地を勝手に使われることに抵抗を覚える人が多いようです。

・確実に借りられるわけではない
農地バンクは、農地の集積化を目的としており、小規模な農地一つでは集積化することができません。
単独で広大な農地を持っている人ならば話は別ですが、現状そういった人が農地を貸し出すということは考えにくく、基本的に小さな土地をいくつも集積化していくことになります。

そうなると、周辺の農家も同様に農地バンクに貸し出す必要がありますが、農地バンクに不安を持っている人などは貸そうとは考えないでしょう。
そのため農地の集積化をすることができず、借主が現れない状態になります。

それが続くと、所有権は貸主に戻されるので、農地バンクに登録したけれども、何も進展がなかったと損を感じる人も出てくるのです。

・借主優先の市場形態
農地バンクの目指す運用では、まず借主がいることが前提となってきます。
貸主がたくさんいても、借りる人がいなければ機構として機能しないため、賃料の設定などは借主の意見を聞いて決めることがほとんどです。

しかし貸主側としても多少は収入が欲しく、タダ同然で貸すという人はあまりいないでしょう。
借主側としたら、不要な農地を金を出してまで使うので、出来るだけ賃料を安く済ませてしまいたいというのが本音です。
そのため借主希望者が現れても、賃料で話がこじれやすいのです。

機構としたら話がこじれると、せっかく集積化した農地が無駄になりかねないので、借主側に立って貸主側を説得しようとするのが目に見えています。

そのため、借主主導の契約になりやすく、貸主側の意見が軽視されやすくなる可能性があるのです。

・成約率の低さ
農地バンクは貸主と借主をマッチングさせる機構です。
そのマッチング率ですが、平成28年度データではたったの13%となっています。
平成27年度では18%と年々高まっていたマッチング率から大きく下がった形になります。

原因としては、借主側が借りたい農地を用意できていないことが大きく、実は借りたい農地をあってもその地域の集積化が進んでいないなどの理由で借りられない人が大勢いるのです。

これについての対策をしなければ、今後もマッチング率は上がることなく、農地バンクへの不信感が出てくるでしょう。

まとめ

農地バンクはまだ施行された新しい制度です。
そのため問題点や欠点が多く、現状を見ると成功しているとは言えないでしょう。

今後政府はどのような動きを見せるかは分かりませんが、既に失敗しているとの声も少なく、何らかの対策を得なければ、農地バンクの制度自体無くなることもありえます。

メリットもデメリットも大きい農地バンクを利用するかどうかは、しっかりと考えて検討するべきでしょう。

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